ミニ太成長記録15:未熟児網膜症-病状詳細編

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本項では、ミニ太が発症した未熟児網膜症の、具体的な分類・病状についてまとめています。
未熟児網膜症の「ステージ」とは?「ゾーン」とは?「plus disease」とは? といった、そんな話です。
ミニ太は「ゾーン2のステージ2・plus disease」という診断を受け、レーザー治療が確定しました。

  • 未熟児網膜症 記事#1:概要については→こちら  ※2019/01/20少し更新しました
  • 記事#2:NICU/GCUでの眼科検査については→こちら
  • 記事#3:未熟児網膜症病状経過(発症から手術まで)については→こちら
  • 記事#5:未熟児網膜症 ミニ太の治療については→こちら

 

未熟児網膜症とは(振り返り)

未熟児網膜症、略称 ROP(Retinopathy of Prematurity)。「網膜血管の未発達のために起こる網膜血管病変」です。

赤ちゃんの網膜の血管形成には最遅で妊娠40週ごろまで時間を要します。そのため、予定日より早く生まれた赤ちゃんの網膜の血管は、当然途中までしか伸びていません。
出生前後における低血圧、出生時の低酸素やその後の酸素供給などの要素が複雑にからみあい、血管の発達が影響を受けます。
その結果、微小な血管が出血したり、血管が枝分かれしたり、血管が蛇行したり、本来網膜に沿って発達すべき血管が眼球の内部(硝子体)に向かって伸びるなど、異常な発達をすることがあるのです。

 

未熟児網膜症の「分類」

未熟児網膜症の状態を説明するにあたって、「分類」というものがあります。
そしてこの分類には厚生省分類と「国際分類」の2種類が存在する、という事を後になって知りました。
ミニ太がお世話になった病院では、後者の国際分類(1984年発表)での診断でした。
先に確立されたのは厚生省分類(1982年以前)らしい。未熟児網膜症治療においては日本が先行していたということでしょうか。

 

厚生省分類

厚生省分類では、網膜症の発展段階に主眼を置き、比較的ゆるやかな経過のI型と、段階的な進行を経ず比較的早く進行して網膜剥離に至るII型に分類しています。
さらに、発達が未熟な網膜血管が異常増殖する活動期と、それが鎮静化した後の後遺症状態を区分した瘢痕(はんこん)期という分類も設けられています。

【活動期:I型の分類】仙台医療センター医学雑誌 Vol. 7, 2017 より)

1期 : 網膜内血管新生期
2期 : 境界線形成期
3期 : 硝子体内滲出と増殖期
初期 _ ごくわずかな硝子体への滲出。発芽。
中期 _ 明らかな硝子体への滲出。増殖性変化。
後期 _ 中期の所見に牽引性変化が加わったもの
4期: 部分的網膜剥離期
5期: 全網膜剥離期

 

【瘢痕期の分類】

1度(grade 1):眼底後極部に著変なし。周辺部に軽度の瘢痕性変化。視力は一般に正常。
2度(grade 2):牽引乳頭を示す。
弱度:   わずかな牽引乳頭。黄斑部に変化無し。視力は良好。
中等度: 明らかな牽引乳頭。黄斑部に外方偏位。
強度:   牽引乳頭、黄斑部の器質的変化。視力は不良。
3度(grade 3):後極部に束状網膜剥離がある。
4度(grade 4):部分的な後部水晶体線維増殖症。
5度(grade 5):完全な後部水晶体線維増殖症。

 

国際分類

厚生省分類とは異なり、主に活動期に関する分類となっています。(国際分類で瘢痕期に対応する概念は1987年・2005年に追加/細分化)。
そして病期だけでなく、病変の位置と範囲が明確化されているのが特徴です。

【国際分類におけるStageJAMA Network “The International Classification of Retinopathy of Prematurity Revisited”より)

Stage 1:Demarcation Line (境界線)
Stage 2:Ridge(隆起) ※厚生省分類I型・3期初期に相当
Stage 3:Extraretinal Fibrovascular Proliferation(網膜外繊維血管増殖を伴う隆起)
Stage 4:Partial Retinal Detachment(網膜剥離)
4A – Extrafoveal(中心窩外網膜剥離)
4B – Foveal (中心窩を含む部分的網膜剥離)
Stage 5:Total Retinal Detachment(全網膜剥離)

なお中心窩というのは、網膜の中心部分、直径1.5mmの範囲である黄斑(おうはん)のさらに真ん中、つまり網膜の中心を指し、すり鉢のようにくぼんでいます。

眼の断面図

色や形を識別する視細胞は黄斑にたくさん集まっていて、中心窩に密集しています。
そのため、未熟児網膜症が「どの位置/範囲で発症しているか」を示すZone(ゾーン)分類に、この黄斑が深く関係してきます。

【国際分類のZone定義】仙台医療センター医学雑誌 Vol. 7, 2017 ・JAMA Network より)

Zone I: 視神経乳頭(図の青エリア、Optic Nerve)~黄斑部の中心窩(図の赤点、Macula)の2倍の距離を半径とした円周内
Zone II:視神経乳頭を中心に鼻側鋸状縁(図の緑部分、Ora Serrata)までを半径とした円の内側
Zone III:Zone IIの外側

また、病変の円周方向の広がりは時刻で記載するため、円の端に時計のような目盛りがあります。(1 時間は 30度の広がりに相当)

 

plus disease と pre-plus disease

国際分類では、各時期の進行予測のため、眼底後極部の動脈蛇行静脈拡張の程度をみる「Plus Disease」という基準を設けています。
動脈の蛇行や静脈の拡張があっても軽度だったり、Zone I範囲内であれば”Pre-plus disease”、Zone IIまでそれらが拡がっていれば”Plus disease”と判定されるようです。

動脈蛇行とは、眼底カメラで撮影された画像を見せて頂くと、文字通り細い血管が多くの箇所でいろは坂のようにうねうねして蛇行して見えました。(正常な場合は緩い曲線で伸びていく)
静脈拡張とは、(素人にはどれが動脈でどれが静脈なのか判別がつきませんでしたが)こちらも眼底カメラの撮影画像では、診断される前の週より明らかに太くて目立つ血管が2~3本増えていました。

画像を見てみたい方はこちら:JAMA Networksに掲載のPlus-Disease眼底画像

 

ミニ太の未熟児網膜症判定

冒頭でも記した通り、ミニ太は「Zone II における Stage 2・Plus disease」という診断でした。
眼科検査を重ねるにつれ、網膜の無血管野と血管との境界にあらわれる薄白い線状の組織(Stage 1のDemarcation Line)が、最初は線状の境界線だったところが盛り上がってきた=幅を取ってきた、そして何よりPlus diseaseの症例である血管蛇行・拡張が顕著になってきたのが素人目でもよくわかりました。

 

未熟児網膜症については最後にもう1記事、ミニ太が実際に受けたレーザー治療とその際に担当の眼科の先生より説明を受けた予後などをまとめさせて頂きたいと思います。

未熟児網膜症の経過・治療方法は赤ちゃんの病状により千差万別ですが、超未熟児の一例として何かのご参考になれば幸いです。

 

【参考サイト・文献】

 

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